Q. 東京都が導入する排出権取引制度の詳細が固まりつつあるようですが


A.  東京都は低炭素型都市を目指し、2020年までに東京の温室効果ガス排出量を2000年比で25%削減する目標を打ち出しています。この目標を達成するため、昨年6月には排出量取引制度の導入も決めました。東京都の排出量取引制度は、年間エネルギー使用量が原油換算で1500キロリットル以上の大規模事業所(約1400事業所)を対象とし、東京都のCO2排出量(約5600万トン)の18%程度をカバーすることになっています。
 東京都には化石燃料を使う大型発電所はなく、また大量にエネルギーを消費する工場などもそれほど多くありません。このためエネルギー転換部門や製造業が排出するCO2は東京都で排出されるCO2の10%以下。対象事業所の約7割はオフィスが占めます。オフィスの場合、エネルギーの大部分を実際に使うのはテナントのため、制度はビル所有者だけでなく大口テナントも規制の対象としています。欧州における排出権取引制度(EUETS)はCO2の約4割を排出する発電所や産業を対象としていますし、米国・北東部排出権取引制度(RGGI)もオフィスを対象にはしていません。東京都の排出量取引制度は世界でもユニークな制度として注目されています。
 東京都の排出量取引制度では、2010年4月から2015年3月までの5年間が第一計画期間です。実務面の準備が進むなかで注目されるのが超過排出量の相殺に使うことができるクレジットに関する議論です。制度の対象となる事業所にはマイナス8%あるいはマイナス6%の排出量削減義務が課せられます。エネルギーの無駄遣いを減らす努力や省エネ投資は当然ですが、目標達成にはクレジットも活用されます。義務の履行には、目標以上に排出量を削減した他の対象企業の超過分のほか、東京都が定める都内中小規模事業所の省エネ対策による中小クレジット、東京都以外での削減事業に基づく都外クレジット、再生エネルギークレジットの3種類のクレジットが利用できることになっています。
 再生エネルギークレジットにはグリーンエネルギー証書が挙げられますが、これを除けば義務の履行に使われるクレジットもこれから始まる制度に基づくものです。いずれの制度でも個々のプロジェクトから生まれる削減量は少ないので、十分な供給量を確保できない可能性があります。供給不足によるクレジット価格の異常な高騰で対象事業所に過大な負担をもたらすことがないよう、大量の供給が期待でき、価格の安定にも役立つ京都クレジットの利用も検討されています。しかし東京都は国産クレジットを重視する方針ですから、京都クレジットの利用には何らかの制限が設けられるかもしれません。
 東京都で排出量取引が開始されることにより生まれる京都クレジットへの需要はこれまでにない新しい需要です。また複数のクレジットを同じ目的に使うので、クレジット間の相互乗り入れという新しい動きも出てくるでしょう。今後の動きが注目されます。